世の中を記述する究極の物理法則

4期生 田中 香津生
29歳にして東北大学の助教。文系理系関わらず科学の楽しさを伝えられる物理学者を目指す、田中さん。納得いくまで突き詰める生粋の学者気質と、類稀な問題意識の高さがどのようにして渋渋時代の経験と折り重なり、今があるのか。物理嫌いだと思い込んでる方、必読。

渋渋卒業後の経緯を教えてください

2010年に東京大学教養学部を卒業し、2012年に東京大学大学院総合文化研究科で修士号を取得後、2年間広尾学園中学高等学校にて理科講師として中等教育に関わりました。その後理化学研究所で大学院生リサーチ・アソシエイト(JRA)として研究に取り組み、2016年に東京大学大学院総合文化研究科で博士号を取得し、4月から東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターに助教として着任しました。

私は「どのようにしてこの世の中があるのか」という問いに問題意識を持ち、物理の研究を続けてきました。この地球が生命が誕生する環境なのはすごい奇跡ですし、これだけ安定してたくさんの星がある宇宙が存在するのもよく考えるととても不思議なことです。なぜこんな面白い宇宙が存在し、私が生まれ存在することになったかを物理という枠組みで追い求めることをテーマに研究しています。その中でも主に私は通常地球上に存在しないような原子を作りその性質を調べることで、我々が長い歴史の中で組み立ててきた物理の理論は本当に正しいか検証し、この世の中を記述する究極の物理法則を追い求めてきました。

大学院生の時はスイスの欧州原子核研究機構(CERN)で水素の反物質である反水素の分光実験や東海村のJ-PARCでミュオンと電子の束縛系であるミュオニウムの分光実験に取り組んできました。現在は東北大学のサイクロトロン加速器を利用してフランシウムという地球上にほとんど存在しない極めてレアな放射性同位元素をつくり、この原子中の電子の性質を高精度に測定する実験の準備に取り組んでいます。

また、東北大学に着任してからはこのような研究活動だけでなく、大学の講義を担当したり、サイクロトロン加速器を利用した企業の産業利用をサポートしたり、多角的に活動しています。特に中等教育に関わってきた経験を生かして、中学高校の理科教育と大学における研究活動の垣根をなくし、より中高生が科学を身近に思ってもらえるような社会にしたいというテーマを持ち、高大連携として中学高校での講演や課外研究活動のサポートに取り組みながら、少しずつネットワークを構築しようと活動しています。

渋渋での思い出は?

学内でも部活や生徒会やボランティア活動等いろいろな形でたくさんの経験をしましたが、それ以外にたくさん学外の活動にもチャレンジしました。

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『渋渋中高時代の課外活動(一部)』

薬師寺での青年衆活動(冬休みや夏休みなどで各2週間程度_中3~高1) http://nara-yakushiji.com/seinensyu/

渋谷区ボランティアセンターでの高齢者、障碍者向けのパソコンサポート(中3~高1) http://www.spnweb.org/

社会教育館における子どもボランティア(段ボールを使った椅子を作る工作教室や、人がコマになる巨大すごろくなどを企画_中3~高2) http://blogs.yahoo.co.jp/asobitai0512

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もともと何か目標を決めて仕事をするのが苦手な子どもだったのですが、自由度の高い研修旅行があったり、子どもボランティアや寺の住み込みなどを経験することでかなり矯正されました。近所の交番、駅員さんなどに時間があるときはよく職業インタビューを行い、高3のときにはフッ化水素の問題について先生と議論してもどうしても納得できなかったので、フッ化水素の工場と大阪大学の化学系の教授にコンタクトをとって質問したりしていました。物理の研究者は結構頭の回転より計画性が大事だったりするので、中高時代にいろんな経験をしてたくさん失敗したことがすごく生きています。

在校生へ向けてのメッセージをお願いします

研究者という立場から中高生や大学生に物理の面白さを伝える中等教育の理科と身近な科学の間の垣根を超えた探究活動が実施される世界を作るのが私の目標です。そのために必要な研究者として、また教育者としての素養を身につけるのがその前にある目標でもあります。卒業生であり、教育実習という形で渋渋に触れ、他校で教えることで渋渋を客観視できるようになり、渋渋生のポテンシャルの高さに最近になって気づきました。ホームルーム一つをとっても他の学校に比べて能動性が全然違います。ぜひ中高生のうちに外の世界にも触れてほしいなと思っています。

ボランティア活動、会社のプチインターンやビジネスコンテスト、大学における高校生受け入れプログラムなど実はすごい数のチャンスがあります。私もその一端を担えるように頑張りたいと思います。

人物紹介
4期生 田中 香津生
東京大学を卒業後、広尾学園にて理科講師、理化学研究所での大学院生リサーチ・アソシエイトを経て、現職は東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターで助教。 驚異的な探究心を持ちつつ、次世代に物理の面白さを伝える責任感も持つ物理学者。

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