大都会渋谷→2,000人の村で生きること

7期生 長田ちなみ(旧姓:砂川)
渋渋生は文字通り、中学高校時代の多感な時期を大都会渋谷で過ごします。映画「君の名は」の男の子の様な。だから僕らは過疎の村やちょっとした地方都市のことすら知っているつもりで、知りません。今回の卒業生長田さんは俗にいう「都会暮らしに疲弊して地方都市に憧れ生活を始めた」訳ではありません。
自分の尺度で物事を見ること、何になるかではなくどう生きるかを思考と行動からたどり着いたのが人口2,000人の栄村だったのでしょう。そして「優秀な渋渋生だからこそ、このことを伝えたい。」という表現に彼女の魅力がすべて詰まっているように思います。 「まさか自分が将来こんな暮らしをするなんて思ってもいませんでした。」気兼ねなくそう話す彼女は、今の生活や挑戦を、楽しんでいる。きっと大都会にいた頃より。

現在、どんな私生活や仕事をしていますか?

大学卒業後、「NPO法人地球緑化センター」という農山村ボランティアや森林ボランティア等を企画運営している団体に就職しました。大学在学中に、このNPOが行っている1年間の農山村ボランティア「緑のふるさと協力隊」というプログラムに休学して参加したことが、このNPOに就職するきっかけでした。
森林ボランティア等の運営を主に担当し、全国各地で日本の森を守り育てるための活動を行ってきました。他にも、企業や学校を対象にしたボランティア活動のコーディネートを行い、中間組織として活動先との連絡調整を行っていました。
その中で、渋々ボランティア部の合宿をNPOとしてお手伝いしており、毎年夏休みに長野県最北端の栄村(さかえむら)という場所で農業や田舎暮らしを体験するプログラムを実施。栄村では以前「緑のふるさと協力隊」を受け入れており、そのOBであり現在も村に定住している方と縁があり、今年4月に結婚・栄村に移住しました。

村に来てからしばらくは仕事にはつかず、まずは村の暮らしに慣れていくことに重きを置いてきました。行事等に参加するごとに少しずつ知り合いが増え、半年が経った頃から仕事を始めました。フルタイムの仕事1つではなく、今は3つの仕事(農産物直売所、学童クラブ指導員、都市部向け販売用栄村産米の梱包作業)を掛け持ちし、それぞれパートタイムで働いています。

他には家庭菜園を作り、季節ごとに様々な野菜を育てています。趣味の範囲ですが、無農薬で無事に収穫できた時はとても嬉しいです。(シカなどの野生動物に食べられてしまうこともしばしばですが…)おかげでスーパーで野菜を買う機会は少なくなり、自分で育てた野菜で日々ご飯を作ることができています。他にもおすそわけを頂いたり、春は山菜、秋はキノコなど、山の恵みを自分で採ったりしながら、田舎暮らしを楽しんでいます!

渋渋で体験し思い出深いものはございますか?

渋渋時代に一番打ち込んだものは、部活でした。女子バスケットボール部に所属し、キャプテンとして役割を担っていました。朝練、昼練、放課後の練習と部活のために学校に通っているような日々でした笑 部活で苦楽を共にした仲間とは、一生の付き合いになると思います。また部活を通して学んだ上下関係や、礼儀、周りへの感謝などは、今の自分の基本になっていると思います。

その一方勉強も手を抜かず、中学3年以降の4年間は特待生として勉学にも励みました。理系に進んだものの、最後は数学に挫折し後期試験で合格した農学部に入学しました。周りの友人は塾等に通っていましたが、私は塾には通わず学校の課題をひたすらこなしていました。放課後、教室などで友人と一緒に励まし合いながら勉強していた日々が、良い思い出です。

これからの夢。そして在校生へメッセージを。

自分がこれからこの村でどう生きていくのか、過疎の村の未来にどう関わっていけるかはまだまだ模索段階です。でも自分自身は、この場所で小さくても豊かな暮らしを実践していけたらと思っています。都会ではお金を出せば何でも手に入りますが、そういう暮らしではなく「作る」ことや「手をかける」ことをできる範囲でやっていきたいと思っています。またどのような形かは分かりませんが、都会に住んでいる人たちにこうした農山村のことを知ってもらう機会を作っていきたいと思っています。まずは自分の友人など多くの人に栄村を訪れてもらいたいです。

渋渋に在籍していた時は、まさか自分が将来こんな暮らしをするなんて思ってもいませんでした。大学に入ってから自分の興味関心がはっきりとし、それが進路にもつながっていきました。大学生の時、長期休暇を利用してマレーシアで恵まれない子どもたちを支援するNPOのワークキャンプに参加したり東南アジアを旅したこと、1年休学して山口県の農村に飛び込んだこと、その全ての経験が今につながっていると感じています。いろいろな世界を知ることで、その分自分の視野や選択肢も広がります。どれがいい、悪いではなく、自分の尺度で物事を見ることが大事だと思います。
「何になるかではなく、どう生きるか」大学の時参加した海外ワークキャンプを主催しているNPOの創設者の言葉で、以来自分が大切にしている言葉です。私は世間でいういわゆる就職活動はほとんどせずに社会に出ました。就活を否定するつもりはありませんが、世の中には本当に様々な進路を歩んでいる人たちがいます。優秀な渋渋生だからこそ、このことを伝えたいです。

※参考HP
【NPO法人地球緑化センター】
http://www.n-gec.org/
【長野県栄村】
http://www.vill.sakae.nagano.jp/
【合同会社小滝プラス】
http://kotakiplus.jp/

※栄村について
栄村は人口約2,000人、村面積の9割以上は森林が占め、山々に囲まれた自然豊かな山村。 2011年3月12日に震度6強を観測する大地震があったが、東日本大震災の翌日であったこともあり、「忘れられた被災地」となっていた。震災を経て、村の高齢化率(65歳以上の割合)は48.8%(H27年4月時点)となっている

人物紹介
7期生 長田ちなみ(旧姓:砂川)
東京農工大学 農学部 地域生態システム学科を卒業後、NPO法人地球緑化センターに就職。結婚後、長野県栄村へ移住。「栄村農産物直売所かたくり」「栄村学童クラブ指導員」「合同会社小滝プラス」の3つの仕事を掛け持ちし、過疎の村の未来と向き合う日々を送る、主婦。

長田(おさだ)さんとコンタクトを希望の方はコチラ
問合せフォーム

この記事を