『自調自考論文』とは、「与えられた知識を自分なりに深化させ、次の知識につなげていく。この力を身につけていく教育活動の集大成として、高校1年〜高校2年の2年間をかけて「自調自考論文」の執筆に取り組んでいきます。」※渋谷教育学園渋谷中学高等学校公式HPより抜粋  このように2年間かけて渋渋の学生は、全員がこの論文制作を行います。卒業生の間ではこの論文でどんなテーマに取り組んだかなどが、世代を超えた共通の話題になっていたり、ならなかったり。勉学やクラブ活動、課外活動とは違う経験であり、ひとつの学生生活のハイライトになるカリキュラムです。

『自調自考論文』もすでに十数年の歴史を刻み、今や「自調自考論文 優秀論文発表会」を実施し、本校に限らず「学生論文」というジャンルにおいて非常に高い評価を得てます。今回は、その『自調自考論文』において実は優秀な渋渋卒業生がお手伝いしていることを知っていただきたい。という特集となっております。中学受験をご検討中の方も、在校生も、卒業生も知ると楽しい、しぶしぶぶ一発目の特集記事です。

実際に『自調自考論文 TA』を行っている渋渋の卒業生4名、7期生の藤垣洋平さん(7期生)を中心に、割田聖洋さん(10期生)、岡祐司さん(11期生)、則近千尋さん(11期生)に、先生も加わり、『自調自考論文 TA』がどのように機能し、どのような展望を持ってるのか伺いました。

藤垣 洋平 (7期生) 東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻

自調自考論文 卒業生TA制度

専門的な内容を深く学び、研究しようとする生徒が増え先生だけでなく専門性の近い卒業生からアドバイスをもらえるようにと始まったのが『卒業生TA(Teaching Assistant)制度』です。生徒と個別に面談をし、テーマの決定、研究の進め方や結果のまとめ方などのアドバイスをしています。基本的には放課後や土曜日に実施していますが、メンバーが会社員であまり時間が取れない時も多々あり、出勤前の朝7時半から面談を実施することも珍しくありません。長期休暇の宿題の様子などを観て、先生と今後の戦略の打合せをしたり、生徒のやりたいことをうまく引き出し導くために勉強会をすることもございます。

自調自考論文は進化し続けている

今の自調自考論文って、実は1期生の時と大きく違っていると思います笑 7期生の頃までは、「とにかく調べて1万2千字を書くものだ」と取り組んでた人も正直多かった印象です。ただ、10期生あたりから当時中心だった先生がテーマ決めや論文の書き方などの指導を充実させていきました。「必ずやることなのだから、やるならちゃんとやろう」と。単に書籍やネットで調べた情報をまとめるだけでなく(1期生の頃はネットで調べるという発想はギリギリあったかないかです笑)、研究の目的を達成するための調査や実験、制作、活動を伴うものになってきています。独自にアンケートの調査をとったり、実験をしたり、ソフトを開発したり、ボランティアかつどうを企画したり、その活動は多岐に渡ります。最近では多くの生徒が外部のコンテストで賞を取るようになるなど、実績という形で進化を表しています。

割田 聖洋 (10期生) 東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻

この活動をはじめたきっかけ、参加したきっかけ

活動自体は2012年度頃から続けています。『自調自考論文』に限らず、渋谷にありふらっと立ち寄りやすい学校だからこそ、その利点を活かして母校に貢献できないかなと思い、先生方と話していたのがきっかけです。論文のレベルが上っていること、そのために大学院で研究している卒業生のサポートがあると助かるという話を貰い、そこで当時はまだ修士課程の人が多かった6,7期生を中心にメンバーを募り活動をはじめたのがTAの始まりです。それ以降は毎年春に募集をして活動を続けています。もちろん今年も募集中です!

岡 祐司 (11期生) 東京大学大学院 教育学研究科 学校教育高度化専攻

活動をしていて嬉しかった経験

生徒の論文が面談後にすごく順調に進んだという話を聞いたときなんか、月並みですがとても嬉しいです。面談前に不安そうだった生徒が面談後にはとても良い表情で帰っていった時や、謝辞に「先輩に相談してテーマが明確になりました」とか「取り組むのが楽しくなりました」とあった時も、素直に嬉しい経験ですね。一緒に先行研究を調べていたら、自分の研究分野にも関係しそうな面白い話を見つけたり、新しい発見があることも。

自分が学んでいて面白いと思っていたことに、生徒がすごく興味を示してくれてテーマに結びついたこともとても良い経験です。

則近 千尋(11期生) 東京大学大学院 教育学研究科

在校生に向けて皆様からのメッセージ

『自調自考論文』は、自分の興味あることを見つけて楽しんで取り組むこと。そこから含めてのカリキュラムだと思ってます。悩むことがあれば先生や先輩に気軽に相談しよう、一人では思い浮かばなかったような発想や進め方を紹介してくれるはずです、そのために私達もいます。

最近は「良い論文を書きたい!」というモチベーションを持って、優秀論文賞や学外のコンクールの賞を目指して活動している人も多いようです。実は渋渋内部の優秀論文賞が激戦になっていて、渋渋内で受賞できなくても外部コンクールで大会評価を受ける作品も出てきていますよね。それで、目標通りに受賞できることは大変素晴らしいことです。ですが、ただ受賞できなかったからと言って落ち込む必要はありません。何が良い論文で、何が良い研究活動なのかは難しい問題で、「論文として発表する研究成果の定量的評価の在り方」自体が、研究の対象になるほど複雑な話なのです。

そのような様々な大人の評価がどうであれ、論文を書く活動プロセスで得られた知識、スキル、充実感、人との繋がり、新しい物の見方、これら全てが、この先の人生でずっと役に立ちます。

「良い論文を書きたい!」という強いモチベーションを持ってくれている在校生の皆さんには、賞を目指すことは勿論良いので、それに加え賞に関わらず、この活動をして良かったと思えるように、自分の気持ちと向き合ってテーマや研究活動の内容を決めてみるのも良いと思います。

卒業生の皆様へ

『自調自考論文 TA』に興味を持たれた方は是非!お気軽にエントリーして下さい。渋渋卒業生で大学院修士課程在籍または修了者を対象としておりますが、大学の学部修士一貫型、医歯薬のように6年制の課程を修了された方、またはその後半の方の参加も歓迎しています。研究ができるのは大学だけではないですので、少しでも興味とモチベーションがあり、専門分野がある人は、まずは気軽にご連絡頂ければと思います。

渋渋卒業生専用『自調自考論文 TA』エントリーフォーム

自調自考論文卒業生TAインタビュー 参加者一覧

藤垣 洋平
東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻
都市計画、交通計画シュミレーション
割田 聖洋
東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻(取材当時)
建築構造、人体挙動
岡 祐司
東京大学大学院教育学研究科 学校教育高度化専攻
英語教育、帰国子女教育
則近 千尋
東京大学大学院教育学研究科 教育心理学専攻 発達心理学

しぶしぶぶ初のインタビュー以外の特集記事いかがだったでしょうか?1期生から続いている「自調自考論文」ですが、卒業生の皆様も各世代によって受け取り方が様々だったのかなと思います。今では外部のコンクールでも評価を受けるようなカリキュラムになっていてとても感慨深いです。是非、興味ある卒業生はエントリーフォームより参加してみてください。7期生、10期生などこれまで接点のなかった卒業生と接点をつくるきっかけとしても良いかなと私は思います。

余談ですが、しぶしぶぶを始めてから、卒業生の皆様からいただく問い合わせ内容は、ほとんどが「母校へ恩返しがしたい、どんな形であれ」といった母校に対する愛情に満ち溢れています。これは他校と比較する必要性すらないことだと思いますが、私達の大きな大きな強みだと思ってます。しぶしぶぶはそんな想いを形にできるサイトであれるように、これからも歩み続けていきますね。(編集/文 伊藤洸太)

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